2024.12.20
IT東亜(IT donga)
ハン・マンヒョク記者 mh@itdonga.com
[SBA × 東亜ドットコム共同企画] 東亜ドットコムは、ソウル経済振興院(SBA)とともに世界で活躍する有望スタートアップを紹介します。創業支援からスケールアップ、競争力強化、グローバルPRまで。SBAの支援を受けて成長するスタートアップの実力を、東亜ドットコムのスタートアップメディアIT東亜とともに見ていきます。
ボイノシス(Voinosis)は、音声に基づく認知障害・認知症スクリーニングソリューションを開発している。音声データを解析し、無症状の時期でも認知障害や認知症の発症可能性をスクリーニングするソリューションだ。そのためにボイノシスは、耳鼻咽喉科(耳科)専門医として活動するシン・ジョンウン代表の長年の経験と専門知識に人工知能(AI)技術を融合し、音声解析技術を開発した。
ボイノシスの音声解析技術は、2023年 国際音響・音声信号処理会議(IEEE ICASSP 2023)のアルツハイマー病AI識別世界大会(The MADReSS Challenge)で第1位を獲得している。技術力の面では、世界的に認められたといえる。
ボイノシスは現在、病院向けソリューション「Brain Guard Doctor」、一般向けアプリサービス「Voice Check」、聴覚・認知リハビリのデジタル治療「HAHA(Hear Again Healing Again)」を開発した。Brain Guard DoctorとHAHAは韓国食品医薬品安全処(MFDS)の認証を準備中で、Voice Checkは12月にローンチした。ボイノシスはグローバル進出も計画している。2025年には米国で通信会社および医科大学と技術検証(PoC)、臨床を進める予定だ。
認知障害・認知症の患者を早期にスクリーニングすることで健康な社会をつくりたいというシン・ジョンウン代表に会い、ボイノシスと音声解析技術・ソリューションについて話を聞いた。

認知障害・認知症の早期スクリーニングソリューションを開発するボイノシス
IT東亜:こんにちは、シン・ジョンウン代表。自己紹介をお願いします。 シン・ジョンウン代表:こんにちは、ボイノシスのシン・ジョンウンです。私はソウル大学校医学部を卒業し、現在は建国大学校病院で耳鼻咽喉科(耳科)教授兼臨床研究センター長を務めています。老人性難聴の機序と治療の研究を進める中でAIに関心を持つようになり、医学とAIの融合による認知障害・認知症スクリーニングソリューションを開発するためにボイノシスを創業しました。
IT東亜:ボイノシスを創業したきっかけは何ですか? シン・ジョンウン代表:22年間、補聴器の患者さんを継続的に治療する中で、単純な難聴から老人性難聴、認知障害・認知症へと悪化する患者さんを数多く見てきました。認知障害や認知症の初期患者の多くは難聴を訴えるため、そうした症状の初期患者に多く出会いました。そのうちに、患者さんの声を聞いて異常の有無を見分けられるようになりました。
音声は肺の空気が声帯を通過する際に生じます。そのためには多くの筋肉が調和して動かなければなりません。認知障害が生じると、これらの筋肉を調節することが難しくなります。私は幼い頃から長くバイオリンを習っていたため聴覚が敏感で、患者さんの特徴もよく覚えています。おかげで患者さんの声の変化を感知できました。症状が現れていない初期の患者さんでも、異常の有無が分かったのです。
そうした患者さんに多く接するうちに、一定のパターンが見えてきました。そこで、私の専門性と経験、ノウハウをAI技術と融合すれば、音声解析によって認知障害・認知症の患者を早期にスクリーニングできると考え、それを実現するために2019年にボイノシスを創業しました。
IT東亜:ボイノシスはどのような会社ですか? シン・ジョンウン代表:ボイノシスは、音声に基づくAI認知障害・認知症スクリーニングソリューションを開発しています。認知症発症前の無症状期に脳の認知機能の退行性変化をモニタリングすることで、認知症の発症を早期に予防するソリューションです。ちなみに社名は、音声を意味する英単語「VOICE」と診断を意味する「DIAGNOSIS」を組み合わせた造語で、患者の音声の音響学的特性とAI音声解析技術を通じて、より健康な生活の維持を支援するという意味です。

AI音声解析技術で開発したソリューション
IT東亜:ボイノシスが開発したAI技術について教えてください。 シン・ジョンウン代表:AI技術には多くのデータと人材、インフラが必要です。特にデータは量より質が重要です。単に量が多いだけでは、かえってAIモデルの精度が下がることもあります。AIを正しく学習させられる有意義なデータが必要なのです。ボイノシスの場合、私が耳科の専門医であるため、初期の認知障害・認知症患者に関する意味のあるデータを確保できました。
また、AIモデルの開発は建国大学校コンピュータ工学科のキム・ウニ教授の研究チームと協力しました。専門医とAI開発者の真の融合により、AIに基づく音響学的な音声収集・解析技術を開発することができました。私たちは医学的検証を経た良質な音声データをもとに、言語やテキストの情報を排除し、純粋に音響学的な情報だけを精緻に扱う解析法を採用することで、言語の壁を乗り越えました。
これにより、2023年 国際音響・音声信号処理会議のアルツハイマー病AI識別世界大会で第1位を獲得しました。この大会は、多言語環境における軽度認知障害・認知症患者の声の解析技術を評価する世界的な大会です。この大会でボイノシスは、多言語の認知症患者を87%の精度で予測し、認知障害の重症度予測では3.7以内の誤差範囲を記録しました。ボイノシスにとって優れた成果であるのはもちろん、個人的にも事業の可能性を確信する重要なきっかけとなりました。
IT東亜:認知障害・認知症スクリーニングソリューションについても教えてください。 シン・ジョンウン代表:私たちは自社開発の音声解析技術をもとに、病院向けソリューション「Brain Guard Doctor」、一般向けアプリサービス「Voice Check」、聴覚・認知リハビリのデジタル治療「HAHA」を開発しました。
- Brain Guard Doctor: Brain Guard Doctorは、認知症スクリーニング検査として行われてきた簡易精神状態検査をAIベースで実装したソリューションです。音声を媒介として精度と患者のアクセス性を高め、結果も3秒以内に提供します。現在、建国大学校病院で前臨床を終え、MFDS認証の手続きを進めています。Brain Guard Doctorは2025年下半期に発売予定で、発売後は病院・クリニックなどの医療機関や福祉施設に提供する予定です。
- Voice Check: Voice Checkは一般の方が手軽に使えるアプリです。アプリで音声をテストし、脳の健康スコアを1〜100点で提示します。スコアに応じて、認知障害や認知症の発症可能性が高い方には、疾患を予防し健康を管理するためのガイドを提供します。検査日ごとのスコア変動をグラフで表示するため、異常の有無を簡単に把握できます。Voice Checkは現在Google Playストアからダウンロードでき、Apple App Storeは審査中で近日中に登録予定です。
- HAHA: HAHAは聴覚・認知リハビリのためのデジタル治療です。無症状期にはほとんどの場合聴覚認知のみが低下しますが、リハビリを通じて認知障害へ進行しないよう支援します。HAHAはテストで経過を確認し、それをもとに個人に合わせたリハビリプログラムを提供します。進行状況や当日の体調に応じて超個別化されたプログラムを提供するのが特徴です。現在開発は完了し、MFDS認証を準備中です。
IT東亜:さまざまな成果を上げていると聞いています。 シン・ジョンウン代表:私たちは創業振興院の創業飛躍パッケージ、中小ベンチャー企業部のディープテック民間投資主導型技術創業支援(TIPS)、超格差スタートアップ1000+プロジェクトなどに選定され、技術力と成長可能性を認められました。また、現代オープンイノベーションラウンジのPoC参加企業、LG第3期インキュベーター企業にも選ばれました。これを通じて、来年は事業化に拍車をかける計画です。

来年はグローバル市場進出に注力
IT東亜:現在SBAの支援を受けています。どのような支援がありましたか? シン・ジョンウン代表:私たちはSBAの支援でPOSCOオープンイノベーションプログラムIMP(Idea Market Place)に参加しました。POSCO IMPは、有望スタートアップの技術力をグローバル市場に広げる機会を提供するプログラムです。グローバル市場進出を目指す私たちにぴったりのプログラムでした。POSCO IMPを通じて、グローバル言語パックの開発とグローバルサービスのローンチ準備、米国食品医薬品局(FDA)認証、グローバル投資誘致および戦略的協力などを進めています。このほかにもSBAは、PR、広報、ネットワーキング、投資家とのマッチングなど多様なプログラムを支援しており、事業の拡大と成長に大きく役立っています。
IT東亜:最後に、今後の計画と目標についてお聞かせください。 シン・ジョンウン代表:2025年にはグローバルヘルスケア市場への進出を本格的に推進する計画です。まずは米国市場をターゲットとしており、現在、米国の主要通信会社とのPoC、米国の医科大学との臨床を準備しています。
また、継続的な研究開発を通じて音声データの収集とAI技術の開発を続けていきます。長期的には、音声を媒介にスクリーニングできる疾患を継続的に発掘し、ソリューションを開発していきたいと考えています。
私たちは、認知障害・認知症の患者を早期にスクリーニングし、健康な環境と生活習慣を維持できるようガイドすることで、健康な社会づくりに貢献することを目標としています。これを通じてユニコーン企業へと成長していきます。
原文記事(韓国語): [SBA 글로벌] 보이노시스 “음성으로 인지장애·치매 조기에 선별한다”